隙間に挟まった話
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18歳くらいのころ、サーフィンやらない?と友達から誘われました。
サーフィンをやっているってなんかかっこいいですよね。この時高校生だった僕はモテたいなあと思っていたので即答で、やる!と答えました。もちろんサーフィンは未経験。
当時は車を持っていなかったので、サーフィン経験者の友達と一緒に、サーフボードを片手に電車で江ノ島へと向かいました。
クソ童貞マインドの僕はボードを持っているだけで声をかけられると思っていたし、水着のお姉さんがビーチにいっぱいいるんだろうな。っていう欲望が全開だったのですが、ビーチに着いた瞬間がく然としたのです。
マジで女の子が一人もいない。
しかもサーフィンってチャラいイメージがあったから、みんな対して練習してねーんだろうなって思ってたけど全然違う。
みんなすげーストイックに練習してるんです。
えっ何これコワイ。
一緒にいった友達に教えてもらいながら見よう見まねでやっていたんですが、波にも乗れないしボードの上にも立てない始末。
ポッキー並みの耐久度の僕の心はいつ折れてもおかしくない状況。
そんな中、波に乗れそうだったのでボードの上に立とうとした瞬間すっ転んでボードについてるフィン(魚のヒレみたいなとこ)で足首を切る始末。
もうこの瞬間僕のポッキーハートは折れました。
僕は砂浜に上がって体育座りでしょげながら、友達がサーフィンしているのを無感情で眺めていました。
しばらくしたら友達が私の異変に気付いたらしく砂浜に上がってどうしたの?と聞いてくれました。
足首切っちゃったから帰りませんか…?
友達は戸惑いながら、 え…うん…そうだね…帰ろうか…。
滞在時間わずか約2時間。 自分の運動神経の悪さを呪った瞬間です。
完全にコールド負けです。
2人して無感情のまま着替えて、トボトボ歩いて帰りの切符を買ってホームで電車を待っていました。
しばらくしたら電車がやってきました。
田舎あるあるなのですが、ああいうところの駅って、ホームと電車の間の隙間が結構あるんですよ。
友達が先に車内に乗って、僕が次に乗ろうとした瞬間、視界がストンと落ちました。
そう、足を踏み外してホームと電車の隙間に落ちたのです。
アァッ!!!!
僕は裏返った声で叫んだ。
ですが、僕はサーフィン帰り。 ボードを片手で担いでいます。
落ちていくさなか、ボードがつっかけ棒的な役割を果たし、ガコン!!!と電車とホームの間に挟まったのです。
ボードを支点にしてブラブラと揺れている僕。
それに気づかず先に席に座っている友達。
笑いともドン引きとも取れない、よくわからない表情をしている車内の乗客達。
恥ずかしすぎて早く出たい。
もがいてはみたけれど、なかなか出れなかった。
そんな時、後ろにいたおばあちゃんに腕を掴んでもらい、なかなかの力で引き上げてもらいました。
数ある人のなかでもおばあちゃんに助けてもらいました。
18歳って言ったらめっちゃイキってるころの年齢ですよ。
そんないたいけな少年が、 足首切ってその帰りに電車とホームの隙間に引っかかっておばあちゃんに助けてもらってそのままその電車に乗って帰るっていう恥ずかしい経験を一度に体験するとどうなると思いますか?
キレると思いますか?
泣くと思いますか?
違います。
仏のようになります。
助けてくれたおばあちゃんに、ありがとうございます。ってすげークールにお礼を言って電車にスッと乗ってすごい姿勢良く車内のイスに腰掛けつつ、迷いがない目で真っ直ぐ前を見つめるのです。
俺は何もしてない。普通に電車乗ってるだけ。
この思いのまま、家までの道のり約1時間をやり過ごしました。
人は一度に恥ずかしいことを経験してしまうと、感情を失ってしまうのです。
僕は何も間違ってない。
ちなみに家に着いてから自分の部屋でベッドの上で、恥ずかしさで悶えてました。